少林寺木人拳(1976)
父を強盗に殺されたショックで声を出せなくなった天涯孤独の青年、通称”だんまり”は引き取られた先の少林寺で落ちこぼれの生活を送っていた。ある日だんまりは地下の座敷牢で両腕を繋がれた男と出会い、秘密裏にカンフーを教えてほしいと頼みこんだ…
俺がジャッキーチェンの映画を初めて見たのは小学生になってすぐあたりだったか…あやふやだけどとにかく小さな頃から見てた。
母親と一緒にゲオに行った時に、「アタシが若い頃はこればっかり見てた」とレンタルしたのを一緒に見た。
初めて見たのは「クレージーモンキー笑拳」、次が「カンニングモンキー天中拳」、たしかその次に見たのがこの映画だった。
この頃はDVDというものが出てきてから日が浅くて、香港の古い映画なんてのは映像もリマスターされておらず荒いし、画面の両端は切れてて登場人物が全部画面に収まってないなんて茶飯事だし、吹き替えも石丸博也じゃなくて山野井仁って人だった。
でも、それはそれは面白くて、面白くて。
母はレンタルしたDVDはすぐさまコピーする人だったので、俺がどんどんジャッキー映画のレンタルを母にお願いした結果本棚はジャッキーだらけになった。この頃が一番母と仲が良かったかもしれない。
暇さえあれば流してたと思う。本当に一日3回同じ映画を見て過ごす小学生だった。ジャッキーのおかげで子供向けのアニメや特撮にハマり出す時期は中学生に繰り下げられた。
小学生の頃も家に友達を呼んだらジャッキーを見せてた。いや、ほんとよく付き合ってくれたよみんな。当時遊んでくれてありがとう。
中学生になると映画を見なくなってきた。
なぜなら中1でついに親がゲームを買ってくれるようになって、友達とゲームの通信対戦で遊べるようになったから。俺はゲームボーイになった。
成績はすっげえ落ちた…
さらにジャッキー映画を忘れたまま高校生になった頃には自分用の5万のノートパソコン(現在も現役)買ってもらっちゃって、一年生の頃は2ちゃんねるやらニコニコやらにずっと張り付いてた。夏休みは2日間しか家から出なかった。のこり23日間くらいずーっと家でパソコン。昼夜逆転。でも昼夜を逆転させると深夜に帰宅する親父に会う時間が増えるから全然改善させることをしなかった。
パソコンの使い方がわかってくると2年生の頃にはAmazonが使えるようになった。
映画の趣味を始める準備はこの時に完全に整ってしまった。レビューサイトを見漁って、アマゾンで安いDVDを買ったりゲオでレンタルしたり。ゲームより映画っしょ！になっていた。
ジャッキー映画のレビューサイトをたくさん見たが、どれも決まって東映が本編に追加した劇伴、少林寺木人拳なら「ミラクルガイ」を持て囃す文章が載っていた。俺の知ってる木人拳にはそんなの流れないからすごく憧れた。でも今となっては放送当時の録画ビデオを大事に持ってるマニアしか見ることができない。羨ましい…
と思っていたら割と早く俺の欲望に世は答えた。
DVDも2013年あたりからテレビ版の吹き替え音声を収録する動きが盛んになってきて少林寺木人拳もパラマウントがミラクルガイ&石丸博也吹き替え付きのDVDを出した。もちろん他作品もだ。
しかもDVDは破格の1500円。パラマウントが出す吹き替え入りソフトの安さは平成も終わりかけの現在ですら群を抜いてて、当時最低賃金の極悪環境バイトでサービス残業を続けていた当時の俺でも心置きなく買い漁れた。いい時代に生まれました。
実際に見るともう、あの頃なんども見ていた映像が鮮明に頭に甦るんだけど、明らかに画質が良くて画面が広くて吹き替えが石丸博也で超絶ソングのミラクルガイが流れまくる。懐かしいのに超進化、不思議な感動で最高の気分になってしまったな…
俺「見て見て！当時の吹き替えだよ！」
母「へー」
悲しいことに母ッパリは韓流ブームの激流に沈んでおり韓流ドラマや韓国語講座のコピーDVDで部屋の棚を埋めていた。母ッパリの韓国熱が冷めてジャッキー熱が再燃するのはそれから3年後、俺が大学2年の頃となる。
それから俺はまた友達に少林寺木人拳を見せまくった。小学生から何１つ成長も配慮もしてない面倒ムーブ。この時に一緒に見てくれた友達もみんな本当にありがとう。地震大丈夫だった？何かあったら話を聞くよ。
とまあ一切自分のムーブに反省していない俺は、結局数ヶ月前にもこの映画のブルーレイを好きなアイドルに直接手渡しした。うわ！気持ち悪いねえ！
あとなかよしの東方絵師のお兄さんにも郵送で送りつけた。
俺も悪いけど、この映画も悪い。なんかやたら他人に見せたくなるように作られてる気がするし反省する気持ちが湧かない。今度もまた他人に見せる算段を立てている。とにかく見せたい。
見たい？
