平和都市モンゴリアンダイナマイト

映画の感想を1割と自分語り9割なので評価の参考にはなりませんが、読んで欲しい。 致命的ネタバレはしないように気をつけてます

サスペリア(1977)

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バレエの名門校に入学したスージーは初レッスン中に倒れ、医者に増血のためとして毎日葡萄酒を飲まされ、飲むたびに深い眠りに落ちる。それからスージーの身の回りに不審な出来事が頻発して…

 

赤と緑のドギツイ照明効果、激しく叫び続けるプログレな劇伴、不可解でショッキングな脚本は総合芸術としての「映画」の新たな一面を見せてくれる、すごく楽しいホラー映画でした。

 

この映画に出てくる少女スージーはとても被虐的な顔つきをしていて、か弱そうで、貧血でふらついて倒れる時なんてもう模範的貧血演技って感じ。

 

最近俺は人生初の献血をして、このスージーを何度も思い出した。

献血に行った理由は「血液型が知りたい」から。血液型占いとか相性判断まっっっったく信じてないし今まで知ろうとも思ってなかったから知らないままほったらかしてたんだけど、就職したら血液型を書かなきゃいけない紙がたくさん出てきてその度に分かりませんなんて言ってたら先々週の金曜日に「お前三連休内で献血行ってこいよ、無料でわかるから」って上司に提言されちゃったので面倒だなーなんて思いながら仕方なくライティ・ライトしたってわけ。

するともう一人の上司が「最近は献血って400ml取られるんだよね。昔は200で良かったのに」とか言い出したもんだから、途端に怖くなって頭痛起こしちゃった。

さっき俺が100円で買って30分かけて飲んでたキリンレモンよりもたくさん血が持っていかれるなんて、死んでしまうんじゃ?とにかく行くと言ったからには休日どこかで行かなきゃ。

早いうちに怖いことは終わらせたいなんて思うのは自由だけど実行するのはとっても難しくて、結局三日目の夕方四時になって家を出た。献血は5時半までだから本当にギリギリ。

 

横浜はいつでも献血を求めているので、当然下調べなんかせずになるべく楽しいことを考えながら駅に降りた。やっぱり予想通りでかい看板とでかい声を持ったおっさんが「献血お願いしますよ、ねえお願いですーして行きませんかー」なんて見てて恥ずかしくなるような声を上げて無視され続けているから、俺はさっさと看板の示す矢印の方へ向かった。

利用したのは献血センターってところで、建物はすぐ見つかったんだけどやっぱり近くまで行くとすこぶる怖くなって周囲を二周した上で最寄りのファミマに入って意味もなくお茶と菓子パンを買ってカバンに詰めた。でもさすがに五時になったら覚悟を決めた。

献血看板中年はなぜか駅前から移動していて、献血センター前で2度目の対面を果たした。センターに入る俺を見て「ありがとうございまーす」なんて喉を枯らして叫ぶもんだからあのバカタレ、目も合わせずに急いでドアを開けて中に入った。途中、半年以内にレバーを半生で食べていませんか?の文字がある張り紙を見てギョッとしたが俺が常食するレバーは全部火が通ってるはずだし、さっさと受付で献血カードを作ってしまった。

献血カードを作ってる最中は俺の手汗は凄いことになってて、受付の黒い台は俺の手が乗せられていた部分だけ曇って湿っちゃったのは恥ずかしかった。

 

人は全然いなくて、カードを作ったら前戯無しで即検査血液の採取に案内された。

「なんで献血することにしたんですか?」

「血液型が知りたいからです」

ここで北海道地震があったからとか献血の呼びかけを見たからとか、そういう偉いやつなことを言うと必ずみじめになって後悔するのを知ってた俺は正直な態度で針に怯え、正直な献血の動機を語った。

でも針を怖がる俺を見たお姉さんが「途中でやめてもいいですからね?」なんて優しく二回も言うもんだから、目を閉じて針を刺すタイミングの知覚を避けることに必死な形相の俺もさすがに恥ずかしくなって「ハハ」なんてニヤニヤせざるを得なかった。

最初の検査採血は少ししか血を取らないからただの注射だし怖くないかと思ってたんだけど、この後400取られることを思えばやっぱり地続きな怖さがあって、だから次の注射まで空き時間があると知ってその場しのぎの安心感に浸った。

献血前には水分を取ったほうがいいので、そこの無料自販機で2杯くらい飲み物を飲みながら待っててください」

ココア、こんな時じゃないと飲まないってことで、早速グビっと舌を火傷。美味いけど熱いなんて思ってたら飲みきらないうちにもう呼び出されちゃった。

 

病院のベッドみたいなところに寝かされたんだけど小さいテレビがついてて「好きな番組に自由にチャンネル変えてください」なんてリモコン渡されたけど月曜の夕方五時の番組なんていつ見てもつまらない情報バラエティ番組しかないことは小学生の初めての夏休みからよく知ってたし、渡された手前少しリモコンを触ったけどテレビは見なかった。

そんなことより俺は針が怖くて、声が幾分か小さくなってたから

「途中でやめても大丈夫ですよ」

なーんてまた30前半くらいの担当の女性から言われてしまったけどプライドが傷つく暇もなく針が怖くて、でも「ハハ、大丈夫です」とニヤニヤとフカした。

 

ウイーンとベッドが倒れるとテレビは二重あごを作らないと見れない位置になった。

俺が目を瞑って、小学生の頃習い事で4年ほど嫌々やっていた非実用的スポーツの剣道で学んだ”精神統一”を準備すると「あ、まだ刺さないからね」と言われて俺は目を開けざるを得なくなって参った。女ッ。

さあ消毒が始まって皆必ず怖くなるヒンヤリフキフキ、そしていつもより痛い針が刺さった。もちろんこの最中目は閉じているし、担当の女性が俺を心配して声をかけているのに対しての返事はかろうじて聞こえるような声。

「もうこれ以上痛いことはないですからね」

俺は22歳だけど、まだ甘えることが許されるんだなって思って少し気持ちが楽になった。

「テレビとか見てて大丈夫ですよ」

位置が見づらいししかも腕に針が刺さってるから流石に行動で応じることを断念して

「テレビ見ないんですよ普段からハハ」って声をできるだけおっきくして言うと

「えー、じゃあ普段はどうしてるんですか?」ってまた俺の恐怖心を紛らわすためにフランクな語調で語りかけてきた。腕の痛みも無くなってきたし俺は精神統一モードから喋るモードに脳を切り替えて、満を持して映画トークショーを開園した。

女性「ホラーが好きなんですか?私はあの音とかでいきなり驚かせるやつが苦手なので和ホラーの方が好きです」

僕「あれはジャンプスケアっていう技法ですね。なかなかアレが好きな人はいないですよね。」

女性「技法なんですね!あれも!」

なんか無料で俺の趣味の話を聞いてもらえて、気持ち良さが大変なことになってきた。腕に針が刺さってなかったら暴走していたかもしれない。洋ホラー和ホラーの話が続き、ついに

女性「洋ホラーでオススメは?」定番の質問だ

俺「えー、サスペリアですね」自分の抜き取られた血を見ていると自然に思い出してしまった。

ジャンルがオカルトものだと伝えると不思議そうな顔になる女性。”絶対に一人で見ないでください”のキャッチコピーもピンとこないようだったけど内容を知りたがって質問を続けてくれた。

俺「内容はえー、えー、」言葉で言うにはあまりにも向かない内容に話し手もそれを聞く聞き手も困った。

俺「プログレ系のBGMがガンガン流れるのが特徴で」プログレ系と言う単語を初めて聞いたであろう女性は「ロックみたいな?」と頑張って食い下がってくれたが、結局はほとんど中身が伝わらないまま俺の血は八分ほどかけて400ml抜き終わった。あー、割と楽しかったなんて思っちゃった。

血を抜き終わったら20分くらいフカフカテレビ付きベンチで無料アイスとドリンクバーを堪能することを勧められて、10年ぶりくらいにハーゲンダッツを食べて痛みに耐え感謝され善行を行なったことによる全能感で気持ちよくツイッターをいじって上機嫌。ココア、カフェラテ、ココア、コーンスープと4杯も飲んじゃった。

献血しただけでその日が充実してしまったから虚無が辛い人はレッツ献血

 

でも俺はなんかフラフラ感が抜けないどころか翌日から体調を崩して業務に支障が出たからもう2度とやらないと思う…走ろうと思っても全く足がシャカシャカと動かず怖かった。