平和都市モンゴリアンダイナマイト

映画の感想を1割と自分語り9割なので評価の参考にはなりませんが、読んで欲しい。 致命的ネタバレはしないように気をつけてます

カッコーの巣の上で(1975)

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破天荒犯罪者ジャックニコルソンが刑務所での労働をのがれるために精神異常者を騙って精神病棟へ

でもそこにいる婦長がクソすぎるので、患者の知的障害者達と一緒にオラオラする話

 

有名な名作ということで、高校三年生の頃にアマゾンで1円+送料340円=341円でDVDを購入して見た。

最初は適当に労働逃れしか考えてなかった主人公マクマーフィーが精神病棟に行き、効果があるともわからんミーティング治療とかクソくだらん規律で患者達を縛り付ける婦長のおばさんに一泡吹かせたらァーって流れは普通にアツいし、見ていて「おらー!いいぞー!やったらァー!」って気分にさせてくれる。

まあそんなのはただの一幕で、もう本当に色々な展開があって目が離せない映画ではあるのだけど…

今回の話はこの映画を大学で友達と見た時の話。

 

俺は大学に入った時、知り合いはほとんどいない状況だったので、ここで作るしかなかった。

手段は体育の選択授業の卓球だった。そこで見つけた男がGというやつで、まあ他にもそこでは後の友人は数人生まれたんだけど、今回はこのGとの話。

 

Gは性格が悪いわけではなかったが、よく嘘をつく男で、その嘘というのが非常にくだらなかった。例えば、何かイエスノーを聞かれればとりあえず即座に「はい!」か「うん!」で、まあ大体それが嘘だったりして後から面倒なことになったりする。

また、土曜が暇か聴くと「歯医者があるから」と言うが、実際には他の友達と遊んでいたりする。いや、お前は俺の彼女かよ、浮気じゃないんだから。なにその嘘…

 

常にGは何かを恐れているんだと思う。「いいえ」より「はい」が相手にいい印象を与えると言うただそれだけで「はい」を脊髄反射的に発言する男なんだと思う。

だから雑談となってもなにも喋らないことが多いし(相手は俺の話を聞いてもつまらないと思うだろうから とのこと)別の友達と遊んでいたことも俺に隠そうとした。

まあ、すごく嘘が下手で、他人から勧められたものを食って微妙と思いつつ「美味しい」と発言するときの顔とかはひどく分かり易かったし、付き合いだして一年も経てば数人いた仲間はみんなそいつが嘘をついた瞬間に即座に把握できてた。

 

何かを恐れているから奇妙な言動をとる男Gだが、三年も付き合えば俺を含む仲間たちに遠慮は無くなった。つまり態度がでかくなったのがすごくよくわかった。会話中にシャドウバースをやりだしてなにも聞いていなかったり、格闘ゲームでまけたら露骨に不機嫌になって目を抑えながら「体調が悪い」と言いだしたりした。この「体調が悪い」は格闘ゲームに負けた時に80%の確率で言うし、本人は本気の顔をして言う。

 

自分の興味のない話は積極的に聞かず、雑談の返事のレパートリーは「へえー」「そうなんだ」「すごい」の3つだった。誇張なく、興味のないときのGはこれしか言わない。

 

でも自分が興味があるものに関しての熱意はすごく、水素水をバカにしていたらすごい反論されて3時間くらい論争になったこともあった。し、「頭が良くなる方法」という本が日に日に本棚に増えていって、そのことについて聴くと色々テクニックを喋ってくれたり、なんか天才って言われる人ってこんな感じなのかもしれないって思った。

 

ここまで酷いことを書いているが、やっぱりGは友達であり、まあ、大学生の頃は何度も何度も嫌いになることもあったが良いところもたくさんある奴だし、今は確実に友達だと思っている。雑。

 

Gと俺含む顔見知りは同じゼミに入った。そのゼミは光学系の実験室があり、暗室があった。早速俺はプロジェクターと椅子を持ち込んで、映画館に悪用した。Gと一緒にそこで見た映画が「このカッコーの巣の上で」だった。

 

最初に書いた通り、この映画はクソ婦長が出てくるのだが、なんと「アメリカ映画のヒーローと悪役ベスト100」で悪役5位にその婦長がランクインしている。

ちなみに悪役1位はハンニバルレクター、3位ダース・ベイダー、14位エイリアン、22位ターミネーターである。気になる方は是非検索して調べてみてほしい。

 

だが映画を見終わったあとのGは「婦長は悪くない」と発言した。規律を守っていただけだから、たとえ結果がどうなろうと正義であるとのことだった。

なにもGが言っていることが間違ってるとか言ってバカにしたいのではない

いや、正直それを言われた瞬間はバカかと思ったことは認める。邪な心でその感想をメモってしまった。

 

しかし後になってみれば、映画史に残る悪の婦長の言動は一人の人間Gの考え方的には理にかなっているということに気づいた。これ、すごくないですか?

悪役、例えば先のランキングで一位だったハンニバルレクターや、3位のダースベイダーに心から同調できる人間は異常者を除きいないと思われる。いないよね?

でも映画史に残る悪の婦長の考えに賛同する人間は、俺のすぐ横にいたのだ。日本の家庭で育ち義務教育を終えて高校、大学に入り健全な生活を送る友人のG。

この映画、フィクションでありながら確実に「すぐそこにありえる」映画なんだ。

悪の定義なんて本当に人それぞれで、それが平均より少しズレれば映画史に残っちゃう。本当に少しだけ、俺といつもKOFで遊んでいたGのように、なんの大きな事件も経験せず、ただ少しだけ、性格の問題か何か知らないけど、誰からも問題にされないレベルで少しだけズレるだけで、その考えを実行する時と場所によれば…

 

Gは俺のフィクションで感じた恐怖を現実にはみ出させた。ありがとうG。

 この映画をまだ見てない人は、是非見て、婦長に対してどんな感想を抱いたか自分で考えてみてほしい。きっと楽しいと思う。

 

 

 

本当にGは今でも友達だし北海道地震が最近会った時も安否確認をして心配してるし、元気に過ごしてほしいと思ってる。それだけは本当。