平和都市モンゴリアンダイナマイト

映画の感想を1割と自分語り9割なので評価の参考にはなりませんが、読んで欲しい。 致命的ネタバレはしないように気をつけてます

フォーン・ブース(2002)

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「人間って面白いな。誰がかけたのか分からないのに電話が鳴ったらついつい出てしまう」

電話ボックスに誰からもわからない呼び出しがなり、偶然入っていたスチュワートはとっさに受話器を取ってしまう。「電話を切ればお前を殺す」

 

数年前に変な体験をした。突然だけど、なんとなくその内容をここに書こうと思う。

 

俺は当時北海道の実家である古いマンションの13階に住んでて、外に出るにはノロマなエレベーターに乗り込まなきゃいけなかった。

このエレベーター、夜になるとなんだか乗るのが怖くなる。

まずなにせボタンを押してから来るのが遅い。そして、乗り込んでからドアが閉まるのが遅い。ドアが閉まってから動き出すのも遅い。動きだして13階から1階まで移動すると、如何なる時間でも必ず誰か別の住人が乗ってくる。この乗り込んでくる住人、マンション古けりゃ住人も墓に片足突っ込んだ老人ばかりなもんだから、これまた乗るのが遅い。

だけどたまに自分1人だけを乗せて13階から1階に着くこともある。そういうことは月に3、4回あった。そのときは、決まってなんだか怖くなる。

 

夜の9時ごろ俺はコンビニに行きたくなり家を出た。その日両親はまだ帰ってきていなかった。

玄関のドアを開け、床が真っ黒な薄寒い廊下を小走りで渡り、広間にたどり着いたそばからエレベーターのボタンを無意味に何度も押した。

ガチャガチャガチャンとボタンを押す音のあとはエレベーターの静かな駆動音が鳴っていた。この夜だけやたらはっきり聞こえてくる潜水艦のような駆動音が気持ち悪くて、なるべく聴きたくないからエレベーターには早く来て欲しかった。だから無駄に連打してしまう。

エレベーターはゆったり来て、俺を乗せてゆっくり扉が閉まりだした。

扉があまりにゆっくり閉まるので、もし殺人鬼に追いかけられてエレベーターに急いで乗り込んだ時に手を突っ込まれて追いつかれてしまうのではないかと考えてしまう。

そうそう、あまりにもその考えが強まったある日のこと。俺には同じそのマンションに住む友達(彼の家は二階)がいて中学からいつも一緒に帰ってたんだけど、その日は家に着く数十メートル前で急に俺が走りだして、エレベーターに先に乗り込んだ。扉は俺を追いかける友達が来る前に完全に閉まった。登る瞬間、友達の怒る顔、そのあと声が聞こえてきたことを覚えている。

と、こんなくだらないことをやったことがある。中学3年生のころだろうか、その友達とは完全に絶交し未だに会っていない。

 

夜9時にコンビニに行きたくなった俺を乗せたエレベーターの扉は閉じ、ゆっくり降りだした。夜9時、結構遅い時間だし誰も乗ってこないかなーなんて思いながら、またも妙に耳に入ってくる嫌な駆動音を鳴らしてエレベーターは降りていく。

ガウン…12回、……11回……ガウン…8回……ガウーン……7回……ガウッ…トトト グァーッ。6階で停止した。誰も乗ってこない。

俺は何故かその6階でエレベーターから出てしまった。何故そんなことをしたのかわからない。エレベーターから早く出たい気持ちが募り、無意識に足を動かしたのかもしれない。誰も乗ってこなかったのが怖かったのかもしれない。

6階に降りてエレベーターの扉が閉まり、1階に行ってしまった瞬間ハッとしてボタンを乱暴に押そうとしたが、なんだか大きな音を立てたら大変なことになりそうな気がして、静かにゆっくりとボタンを押した。

6階に取り残された。いつも自分がいるのは13階、13階には優しいおばさんがいて、顔を合わせると挨拶してくれる。何故かそのおばさんの家のドアはいつもあけっぱなしてて、ドアを横切る時にチラ見すると居間のテレビが見える。

6階には知ってる人は誰もいないからすごく怖くて、頼むからエレベーターがくるまでこの階の住人は誰もドアから出てこないでくれと心の中で祈ってた。夜9時は真っ暗で廊下もエレベーターのスイッチから発される光しか無い。もしかしたら他に光源があったかもしれないけど、怖くて覚えてない。

エレベーターの駆動音以外は外の車のエンジン音しか聞こえてこなかった。6階なのでいつもより聞こえやすい。ずーっとエレベーターの位置を示す光を追っていた。なんで降りちゃったんだろうとずーっと後悔していた。

エレベーターは一階に到着し、そのまま降りる人が誰もいないのに扉を開き、一定時間停止、また扉を閉めて上に登ってくる。もうすぐ乗れる、そう安心したそのそばから、エレベーターは6階を通り過ぎて7階へ。

誰か上階に人がいるなんて、なんでこんな時間に。エレベーターは10階で止まって降りてきた。誰か乗ってるのかな、やだなあ、来る来る…グァー トトトト… 中には誰もいなかった。

なんで毎朝乗ってるエレベーターなのに、たまに乗ると夜だけこんなに「嫌」なんだろうと思いながら逃げるように乗り込み、閉まるボタンを何回か押した。扉が完全に閉まるまでは安心できない。

扉が閉まった。

あれ?扉が閉まったけど動かない。扉が閉まってるのにいつまでも動かないエレベーターほど不自然なものはなく、今までの恐怖が何倍にも増えていくのを感じた。コンビニに行きたいと思わなければ今頃家で…

一階のスイッチを押していないことに気づいたのは15秒後くらいだった。

一階を押すと、扉が閉じたままエレベーターは下に降りだした。扉が開いたりしないのは当然なんだけど、開閉動作無く動くエレベーターというのもまた大変な違和感を与えてくるもので気持ちが悪かった。

エレベーターは一階まで辿り着き、俺はついに外へ出ることができたってわけです。

 

今考えても、非常に変な体験でした。