平和都市モンゴリアンダイナマイト

映画の感想を1割と自分語り9割なので評価の参考にはなりませんが、読んで欲しい。 致命的ネタバレはしないように気をつけてます

悪魔のいけにえ(1974)

テキサスに遊びにきた若者グループは道の途中でヒッチハイカーを拾った。この男が明らかに様子がおかしい。ついには自分の手のひらをナイフで刻み、傷口を撮影してその写真を皆に売り出した。

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この映画を見たのは高校生の頃。レンタルで親父と一緒に見た。なぜ親父と見たかというと、一人で見るのは怖いから。

2001年宇宙の旅」の記事でも書いた通り、俺は元々はホラーが大の苦手だったし、血が流れる描写も怖くて古いバトル作品のアニメ(聖闘士星矢など)とかでも血を見ると悪い意味でドキドキしていた子供だった。白黒の漫画だったら全然平気なんだけど、赤い色がついてるとおわっとなるし動画になるとアニメでも結構うおおとか思ってしまうし、実写ならヒエとなる。

漫画あたしンちでユズヒコの髪を切ろうとするお母さんが耳にハサミの先端をチクッと刺すシーンでもちょっとゾクっとして、飛ばして読むようにしてた。

 

特に俺が怖かったやつ

Mr.マリックがサングラスを外し、エンタの神様に「松尾幻燈斎」という名前で出ていた頃を覚えているだろうか。自分はその時小学生だったか。

エンタの神様って最初はお笑い以外にも手品とか歌手の映像を流してて、番組タイトル通りエンタメ要素を複合したような番組でしたよね。芸人が出てくる前のキャラセレみたいな映像がクルクルと回ってるところも「お笑い」とか「歌」とか書かれた文字が回っていた気がする。

松尾幻燈斎、毎回番組冒頭に出てきて手品をやる。ある日彼は手の平に500円玉を貫通させる手品をやった。それも「ポン!」って通過させるんじゃなくて、ゆっくりゆっくりと差し込んで、またゆっくりゆっくり抜き取るように貫通させるやつ。

その手品…超魔術…ハンドパワー…は小学生の俺には輝いて見えてた。今となっては誰がが買うのかよくわかんねえ手品グッズ、あのトイザらスとかに必ずあるアレを3つくらい買ってた俺は食い入るように見てた。

それから数週間後に事件は起こった。松尾幻燈斎宛てに、番組へおたよりの手紙が届いたのだ。内容は、「先日500円玉がゆっくりと手のひらを貫通していましたが、貫通しているのだから必ず出血を伴うはずです。」

そんな内容。これを松尾幻燈斎が読み上げ出した時、「は?こいつ手品見たことねえのか?」なんてことを思ったし一緒に見てた両親も「なにそのおたより」みたいなことを言っていた。

両親が同じ番組を見て同じ感想を言っていたのは後にも先にもこの時くらいで、それくらい「は?」って感じのムードが流れてた。

「それでは、今回クレジットカードをこの手に出血させながら貫通させます」

幻燈斎が言い出した。え?なんで?

こいつ挑発に乗ったら何でもやるのか?前に500円玉を出血無しで貫通させたんだからやめろよ。まず何でそんなお便り読み上げたんだよ。ちょっとまって…

無情にも、画面内に表示される「ショッキングな映像なので心臓が弱い方は見ないでください」的なやつ。うわー!俺は目を閉じた!

母が「こんなの手品なんだから本当に血が出てるわけじゃないよ。絵の具だよ」と目を閉じて首の向きもテレビから逸らした俺に言うが、そんなのは知ってる!だけど無理なの!という気持ちだった。

見てないので結局その手品はどんな感じだったか全く分からない。今となっては後悔である。バカ映像、見たかった。

 

こんな感じで血が大の苦手だった。デスノートのエルのスピンオフ映画死ぬほど辛かった。

怖いのもクレヨンしんちゃんホラー回とかは当然見なかった。風間くんのお母さんが怖くなる映画も死ぬほどキツくて劇場で目を閉じてた。まああれらは22歳になった今見ても充分なホラーパワーあると思うけど…

あと雑誌「小学2年生」の8月号あたり、夏だからって怪談が載ってたんだけど、女の子が通学路にある少し隙間が空いたマンホールに小石を毎日1つずつ入れる話。日に日に隙間はでかくなるから石も合わせてでかいの見つけて落としてたら、最後のページで女の子自体が伸びてきた黒い腕に引きずり込まれてしまうんだよな。トラウマになってしまった。

あ、ハリーポッターシリーズももれなく全部怖くて目をつぶり気味に見てた。

 

ここまでが小学生。中学生ももちろんホラー無理。帰ってきたウルトラマンの数話を手で目を覆いながら見てたのはこの時期。世にも奇妙な物語もチャンネルをチャカチャカ2秒ごとに変えながら見て、少しでも怖くなりそうならそのまま変えっぱなしにできるようにしてた。

遊園地のお化け屋敷も一度も入ったことがなかった。中学生の頃クラスのやつはみんな入ってたなあ。文化祭もどっかのクラスがお化け屋敷つくってたけど入らなかった。

でもこの頃怪談好きな友達(烈と呼称する)(小学5年生の頃だったかに転入してきて中学生も一緒で今も仲良い)がいて、その烈がまあサドっ気が強い上に人を乗せるのが上手くて、百物語じゃないけど放課後に数人で怪談語り合ったり、お互いの指をコックリさんの容姿の上に乗せたり、ホラーオムニバス本を3冊くらい借りたりした。あぁ〜、恐ろしいぜ!

烈とは仲はすごい良かったし、烈の言うことは俺より一回り大人びていたからなんか言うこと全部信用してた。今思えば悪い奴だな…

烈が俺のホラーへの鉄壁の防御にヒビを入れた後、高校生になった頃にはパソコンを買い与えられて洒落怖を読み漁るようになっていた。体内の硬度調節機能が壊れて超軟体スネークボディになってしまった。

血とかまだ怖いけど、文字だけのホラー話なら全然楽しさを感じられる状態。

 

ところで、今お前の後ろにいる顔がぐちゃぐちゃの女は誰?

 

ヒエエーッ!こういう文章を深夜に見て楽しい怖い楽しい怖いとなっていた。もしかして、ホラー映画いけるのでは?映画館にある呪怨のポスターが怖くて目を背けて廊下を歩いてたあの頃との決別?もうレンタルしてきた映画の予告編にホラーのやつが挟まってても急いで早送りしなくていい?(普通レンタルに入ってる予告編は全部早送りするものだが、俺は何故かこれを見るのが好きだった)

でもやっぱり怖くて、なるべく血がでない映画、そうだ、古ければきっとグロくないからそれだ、検索!って感じだった。

そして出てきたのが「悪魔のいけにえ」。何で?って今でも思う。だって血が出ないホラー入門用作品って他に良さそうなのない?ポルターガイストとかさ…

悪魔のいけにえを見る日、俺は目をつぶっても親父にバレない位置、後ろの方から見ることにした。ここにきて怖気付いた感ある。

 

やっぱり普通に怖すぎた。2001年宇宙の旅も不気味で怖い映画だったけど、ホラーというジャンルで作られた作品の怖さは正面からくる感じで大いに怖い。登場人物の食人家族がどこまで危険なことをするのか分からない怖さが最後まで続いた。血もあんまり出なかったけど結局出るところでは普通に出たし、生きたままの女の背中を天井から吊られたフックに刺してぶら下げるシーンはヌオーってなった。親父は「へぇー、なるほど、ハハッ」みたいなことを言ってニヤニヤと感心してた気がする。意味わからねえ…

中学の木工の授業で電ノコやドリルの危険さを皆に教えるために授業前に先生が数十年前の事故例みたいなのを喋ったことがあって、さしがねを投げて遊んでたら目に刺さっただの指の間をノコで裂いただの言ってたら突然俺の3つ隣に座ってた学級委員書記君が呼吸を荒くしだして体調の不調を訴えて保健室に運ばれたことがある。あいつ、この映画見たらどうなるんだろう

 

この映画を見てからなんかホラーがいけそうな気がしてきたからゾンビとか13金とか、タイトルを見るだけで避けていた映画を見ていった。まさに効果覿面でユルっと楽しめるようになった。悪魔のいけにえは怖いながらもめちゃくちゃ面白い映画で、ホラー耐性はもちろんホラーの魅力も教えてくれた。

まあ未だに怖いものは怖くて、さだかやとか普通に怖かったんだけど…でも怖がることを楽しむことも覚えた。

ここまでくるとナイフで首を切り裂いたり内臓を引っ張り出したり口の中にカミソリを突っ込んでかき回したりが楽しいんですよね。もう色々なスプラッター映画を見ていった。高度な特殊メイクによるゴアの楽しさに存分に浸った。

でもやっぱり心の故郷である「悪魔のいけにえ」に帰りたくなって、DVDを買って定期的に見ている。「悪魔のいけにえ2」、「レザーフェイス一家の逆襲」、「レザーフェイス-悪魔のいけにえ」と続編を見たけど、明らかに一作目だけ常軌を逸したノンジェネリックホラーアプローチを感じて何度も見てしまう。

 

ホラーやグロテスクが苦手な人で、もし自分の楽しみの幅を広げてみたいと思った人は悪魔のいけにえをレンタルしてみて。失敗すれば二度とホラーコンテンツに関わりたくなくなるかもしれないので、俺のように親父と一緒に見るといいかもしれない。心霊系に対する耐性はあまり付かないけどスラッシャーやバイオレンス、スプラッターは楽しくなると思います。

 

俺をホラー映画好きにした「悪魔のいけにえ」、そして烈にありがとう。そういえば烈はホラーの他にも俺に地球防衛軍2をやらせて、ゲームにおける地道なトライアンドエラーと作業の楽しさも教えてくれたよね。ありがとう。また俺が北海道戻るときに会おうな。